大手企業の老人ホーム事業撤退から見えること
2026年4月7日、住宅大手の大和ハウス工業株式会社が、介護事業からの撤退を発表しました。
私たちはつい、誰もが知る大企業の名前が付いている老人ホームに対して、
「こんな有名企業が経営しているから、きっと安心だ」と無意識に信じてしまいがちです。
しかし、このニュースからは、たとえ大企業であっても、介護事業の経営に行き詰ることがあるということが見えてきます。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20260408-GYT1T00130/
大和ハウス工業が介護事業から撤退、2子会社の全株式を「ALSOK介護」へ売却
【読売新聞】 大和ハウス工業は7日、介護事業を担う子会社2社の全株式を、ALSOKの連結子会社「ALSOK介護」に売却するwww.yomiuri.co.jp
すでに起こっている介護業界の事業譲渡
大企業ブランドを信頼するシニア層
私は、業務で老人ホーム選びのご相談を受けることが多いのですが、シニア世代の方々の有名企業、いわゆるブランドに対する信頼の強さを感じます。
「大きな企業が経営している老人ホームを選ぶ方が安心ですよね?」
このご質問を何度も聞いています。
企業ブランドは、その会社が長年築き上げてきた信頼の証です。しっかりした経営や質の高いサービスへの期待を持つのは、自然なことだと思います。
実際、大手企業のグループ会社が運営する老人ホームを見学すると、建物や設備はもちろん、スタッフの対応など、さすがと思う場面も少なくありません。
しかし、もしも経営母体がずっと変わらないだろうという前提で選ぶのであれば、その答えはノーと言わざるを得ません。
大和ハウス工業だけではない
先日、大和ハウス工業が介護事業からの撤退を発表しました。関東圏を中心に老人ホームを運営していましたが、ALSOKグループへ事業を譲渡することを決めています。
介護事業に関連するグループ会社の譲渡について(大和ハウス工業公式リリース)
https://www.daiwahouse.co.jp/about/release/house/20260407162153.html
こうした動きは、今に始まったことではありません。
2022年には、関西で馴染み深い関西電力グループの関電ジョイライフも、老人ホームなどの介護事業から撤退しています。
関西電力、介護事業から撤退 グループ2社をALSOKに譲渡関西電力は6日、グループの介護事業会社2社の全株式を警備大手のALSOKに譲渡する契約を結んだと発表した。譲渡額は明らかにwww.sankei.com
介護業界では、以前から事業の譲渡や再編が繰り返されています。
特に老人ホームは、人材確保の難しさやコストの上昇などから、経営の難易度が高いとされています。
たとえ大企業が経営する老人ホームであったとしても、それが「永続的な運営」を保証するものではないということを忘れてはいけません。
外からは安定して見える企業でも、事業単位ではそうではない場合も十分にあり得ます。
また、大企業=介護サービスが充実とも言い切れません。
お客様からは、「候補に入れている老人ホームの経営状態が危なくないかを教えてほしい」というご質問もよくいただきます。
ただ、正直に申し上げると、将来の経営を断言することは簡単ではありません。
その代わりに、私は多くの施設を定点観察し続けています。その経験から、入居率の急激な低下や、現場スタッフの質の変化、サービスの質の低下といった現場の異変をお伝えすることはしております。
(経営状態を知りたいという声にお応えするために、外部の専門家に依頼しての経営診断サービスの導入も検討中です)
経営母体が変わると起こりやすいこと
老人ホームの経営母体が途中で変わると、以下のような変化が起こりやすくなります。
料金体系の見直し
値上げ、月額費用に含まれていたサービスが有料化されるなど、実質的な負担増につながる見直しが行なわれることがあります。
職員の入れ替わり
職員は譲渡先企業の社員になり、そのまま残って働くというパターンが多いのですが、待遇が変わることによって退職が連鎖的に起こることもあります。
運営ルールやサービス内容の変更
経営コストの見直しのために、食事時間の変更や、レクリエーションの頻度、職員配置など、生活に密着したルールが変わることもあります。

何を基準に選べばいいのか
もちろん、サービスの質が向上するといった良い変化が起きることもあります。しかし、変化そのものが高齢の入居者にとって負担になる可能性があることは知っておくべきでしょう。
では、私たちは何を基準に老人ホームを選べばよいのでしょうか。3つの提案をまとめました。
ブランドと同時に、サービスの質を見極める
大企業の看板は一つの安心材料になりますが、それだけで決めず、自分にとって必要なサービスが備わっているのかを確認しましょう。
そのためには、見学をして、しっかりと話を聞くことが一番の近道です。
入居率と運営実績を確認する
数字は正直です。そのホームが地域でどう評価され、どれくらいの入居率を維持しているかを確認しましょう。
一般的に、高価格帯の老人ホームでは、入居率が8割を下回ると運営が厳しくなると言われています。
(厚生労働省が運営する「介護サービス情報公表システム」から入居率を確認できます。ただし、サイト上の数字は必ずしも最新ではない可能性があるため、見学の際に改めて確認しましょう)
経営母体が変わる可能性をあらかじめ受け入れておく
経営母体が変わり、その時にサービス内容や料金に不満を持つかもしれません。そして「転居したい」と思った時、誰に相談するのか、誰に手続きを代行してもらうのか(ご自身でできない状況を見据えて)を考えておきましょう。
まとめ
大手であっても、撤退や事業譲渡はすでに起こっています。
その上で、将来の自分のために「何を重視しようか」と、今一度考えてみませんか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。