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身寄りのない高齢者支援 公的制度始まる?─社会福祉士の視点で解説 評価と懸念─

厚生労働省は、頼れる家族がいない高齢者を支援する新制度設立に向けて動き始めています。

入院や老人ホームへの入所、死後の事務まで支えるこの仕組み。
当事務所のお客様からも、これまでに切実なご相談を受けています。


「行政が家族の代わりに支えてくれたらいいのに…」そう思っておられるお客様にとっては、今回の新制度設立は朗報でしょう。
しかし高齢者福祉専門の社会福祉士としては、まだ朗報かどうかの判断はできないと思っています。
社会福祉士の視点から評価点と懸念点を整理し、ご紹介します。

制度創設の背景と目的

2025年8月3日 読売新聞の報道によると、厚生労働省は、頼れる親族がいない高齢者を支援する新たな公的制度の創設の方針を固めました。(2027年度開始予定)
支援内容は、入院や老人ホーム入所時の手続き、連絡先の代行、さらには葬儀や遺品整理など死後の事務まで多岐にわたります。利用料は所得に応じて設定され、低所得者は無料または低額となる見込みです。

評価できる点

手が届かなかった人へ支援が届く
最も評価できる点は、これまで民間サービスを利用できなかった高齢者への安心につながる点です。
民間業者が提供する高齢者サポートサービス(身元保証や死後事務など)は、契約時に100万円以上を求められるケースが多く、ハードルが高いものでした。
また、トラブルが多い業界で、現時点では信頼に足る業者を選ぶことは極めて困難です。

この新制度が実現すれば、そうした高額な民間サービスに頼らなくても、支援を受けられるようになります。

懸念点

対象は低所得者だけ?中・高所得者はどうなるのか

しかし、今回の報道だけでは不透明な点も多くあります。
「所得に応じた利用料」とされていますが、数か月前の段階では「低所得者を対象」との発表がありました。
現時点では、中・高所得者が制度の対象となるのかどうかは明確ではありません。

たとえ資産や一定以上の収入がある高齢者でも、身元保証や死後事務を担ってくれる人がいないという悩みは共通です。公平性という点からも、所得だけで線引きせず、幅広く利用できる仕組みが望まれます。

人員と緊急対応の体制は大丈夫?

制度の担い手は、社会福祉協議会やNPO法人などの地域福祉団体とのことですが、実際に個別の支援を行うには専門性と人手が必要です。入院手続きや老人ホーム入所には、緊急性が伴う場合もあります。ましてや死後の事務には、全てを代行する責任が発生します。

福祉業界の現場ではすでに慢性的な人手不足が課題です。
この制度を機能させるためには職員の確保・育成が必要ですが、元社会福祉協議会職員としての立場から言うと…それほどの人材が確保できるのか、心配です。
安い賃金の非正規職員を雇用し、不安定な人員体制で業務をこなすようになる可能性が高いです。そうなると自ずとサービスの質は厳しいものになるでしょう。

福祉の現場は慢性的な人手不足

高齢者のニーズは多様──制度でどこまでカバーできるか

高齢者が求める支援は多様です。
金銭管理や入院や老人ホーム入居手続き支援だけでなく、在宅での見守りや緊急時の駆けつけを希望する方もいます。また、同じ人でも年齢や病状の変化により、希望内容はいかようにも変化していきます。
当たり前のことですが、サービスの範囲を定めることは必要です。しかし、「できること/できないこと」の線引きが、高齢者のニーズとずれてしまうと、高齢者にとっては「当てが外れた」となるでしょう。

さらに、老人ホーム側が求める「身元保証人」の役割を、この制度でどこまでカバーできるのかも、まだ明らかではありません。
老人ホームによっては、連帯保証人の役割を求めます。
本人が利用料を滞納した場合、老人ホームは身元保証人に滞納分を請求します。
今回の制度利用者が利用料を払えなくなった時に、それを公費で賄うのかどうかは慎重な議論が必要です。
保証内容が曖昧なままでは、老人ホーム側が受け入れを拒む可能性もあります。

財源はどこから?現役世代への負担

「低所得者は無料や低額」──これは“福祉あるある”で、弱者への配慮が感じられ、一見良さそうに見えてしまいます。
しかし、その財源は結局、現役世代や高所得の高齢者からの税金や社会保険料によってまかなわれることになります。

子育てや介護、自身の老後資金に不安を抱える現役世代にとって、「また高齢者支援か」と思う方も少なくないでしょう。特に、自身の親の介護をしている人たちからすれば、「なぜ身寄りのない高齢者のために、これ以上の負担を強いられてしまうのか」という不満も出るでしょう。

この制度のスムーズな実現には、利用者の負担と、現役世代の理解を得る工夫が求められます。
よって「低所得者は無料」とするのではなく、「低所得でも負担」とするべきではないでしょうか。
安心・安全はタダではありません。誰かが自分のために動いてくれることは当たり前ではないという気持ちを、皆が持つ。これが現役世代の理解につながります。

「公的サービスに多くを求めない」姿勢が制度を守る

今回の報道では具体的な負担額については盛り込まれていませんが、おそらく民間サービスより低負担となるでしょう。
ここで大切なのは、高齢者が低負担の公的サービスに多くを求めない姿勢を持つことです。
支援の範囲を理解し、ある程度の割り切り(質を求めすぎない)が、持続可能な制度にする鍵になります。

制度の本当の意義と私たちに求められる意識

この制度がきちんと確立され、混乱なく運用されるようになれば、高額でありながらも信頼性が不透明な民間サービスに頼らなくてよくなり、いわゆる「おひとりさま高齢者」が、人生の終盤に安心して過ごせる社会に一歩近づくことができるでしょう。

ただし、それは制度だけで成り立つものではありません。高齢者自身の理解と、現役世代の納得、そして現場の人員体制が三位一体となって初めて持続可能な制度となります。

誰もがおひとりさまになる可能性のある社会だからこそ、限られた人的資源をどう活用するのかを考えなくてはいけません。
少し寂しさはありますが、「足るを知る」という社会的意識が求められる時代になっているのではないでしょうか。

まとめ

要点①高額で不透明な民間サービスに頼らなくて済む新制度

厚労省は、身寄りのない高齢者のための公的支援制度を検討中。
入院・施設入所・死後事務までカバーし、低所得者は無料や低額の見込み。これまでサポートを受けられなかった人への安心につながる期待。


要点②人手不足とサービス範囲に懸念も

現場を担うのは社会福祉協議会やNPO法人の予定だが、慢性的な人員不足が課題。高齢者のニーズは多様で、どこまで制度でカバーできるかは不透明。期待した支援が対象外になる可能性も。


要点③「低負担で多くを求めない」意識が制度を守る

制度が持続可能であるためには、高齢者の「公的支援は最低限」という認識が必要。また、現役世代の税金や社会保険料で支えられる制度であることから、世代間のバランスと納得感も不可欠。


最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

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