シニア向け分譲マンションはおすすめ?老人ホームとの違いと、購入前に確認したい7つの注意点
先日、東京にお住まいの方からお問い合わせをいただきました。
「シニア向け分譲マンションを候補にしているのですが、老人ホームとの違いや、どう選べばよいのか教えてほしい」
インターネットで私の講座「かしこい老人ホームの選び方」を知り、ご連絡をくださったそうです。
さっそくオンラインで個別レクチャーを実施することになりました。便利な世の中になりましたね。
シニア向け分譲マンションは、関西以外のエリアでも増加傾向です。
テレビや新聞広告で目にする機会が増え、「気になっている」というシニア世代の方も増えてきているのでしょう。
結論から言うと、シニア向け分譲マンションは、元気なシニアが快適に暮らすための設備やサービスが充実した「所有する住まい」です。老人ホームとは、所有権や介護サービスの受け方などに大きな違いがあり似て非なるものと言えるでしょう。
「シニア向け分譲マンションは老人ホームと何が違うの?」「介護が必要になっても住み続けられる?」「購入するとき、何を確認すればいい?」
この記事では、社会福祉士の立場から、シニア向け分譲マンションの特徴、老人ホームとの違い、メリット・デメリット、購入前に確認したいポイントをわかりやすく解説します。
シニア向け分譲マンションがどういうものか、老人ホームとの違い、そして選ぶときに気をつけたいことを、わかりやすくご説明します。
シニア向け分譲マンションとは
※本コラムでご紹介している内容は、一般的なシニア向け分譲マンションの傾向をまとめたものです。設備やサービス、費用などは物件によって異なりますので、ご検討の際は物件ごとに個別に確認することをお勧めします。
実は「シニア向け分譲マンション」というのは正式名称ではありません。シニアが暮らしやすいように配慮されたサービスや設備が充実している分譲マンションを、わかりやすくそう呼んでいます。
東京カンテイの2022年の調査によると、2023年までに竣工予定の物件を含め、全国で98物件・14,947戸のシニア向け分譲マンションが供給されていました。2000年代以降、物件数・戸数とも増加傾向にあります。

ひと目でわかる基本情報
まずは費用面など、基本的な情報を整理しておきます。
- 入居時費用:数千万円~数億円
- 月額費用:10万円台後半~数十万円
- 介護サービスの提供方法:マンション内には介護員が常駐せず、外部の介護事業者と契約して利用する
- 介護サービス費:利用するサービスの内容によって変動する
「入居時に高額な費用がかかるうえ、毎月の費用も決して安くない」「介護が必要になったら、在宅介護と同様に外部のサービスを個別に契約する」という点は、選ぶ際に押さえておきたいポイントです。
3つの特徴
①元気なシニアが楽しめる設備
レストラン、シアタールームや図書室、温泉、ジムなどの設備が備わっていて、サークルやクラブ活動、イベントも充実しています。

また、緊急通報システムが設置されていて、急病時には救急車の手配などをしてくれます。
設備が充実している分、管理費は一般的な分譲マンションより高額です。
②所有権があること
老人ホームと違い、購入すると「所有権」を得て資産になります。よって、売却したり、相続したりすることもできます。
③介護が重くなると、住み続けるのが難しくなる場合がある
お元気なシニアを想定しているため、マンション内に介護員は配属されていません。
介護保険を利用した訪問介護などは、あらかじめケアプラン等に基づいて利用するため、施設に職員が常駐している場合のように、「今すぐトイレに連れて行ってほしい」といった随時の対応を想定していません。
シニア向け分譲マンションと老人ホームの違い
お問い合わせでよくいただく「老人ホームとの違い」を整理すると、大きくは次の2点です。
所有かどうか
シニア向け分譲マンションは「購入して所有する」住まいです。一方、老人ホームの多くは「利用権」を得て住む契約で、退去時に居室を売却したり相続したりすることはできません。
介護の受け方
シニア向け分譲マンションは、基本的に元気な方向けの住まいで、介護が必要になれば外部の事業者と個別に契約します。
一方、介護付き有料老人ホームなどでは、住まいの中にスタッフが常駐し、24時間体制で介護を受けられるのが一般的です。
「資産として持ちたいか」「将来、介護が重くなったときにどこまで対応してほしいか」によって、選択肢は変わってきます。
認知症になっても住み続けられる?
①売却時の市場が確立されていない
シニア向け分譲マンションの歴史は浅く、戸数が少ないため、市場が未成熟です。資産価値が不透明で、売却時に目安となる価格相場がわかりにくいのが現状です。
②「介護も安心」の中身をよく確認すること
パンフレットや広告に「ずっと住み続けられる」「介護も安心」といった言葉があっても、基本的には元気な人向けの住まいです。その「安心」が具体的に何を意味しているのか、しっかりと調べてから選ぶ必要があります。
「脚が不自由になって、レストランまで自分で行けなくなったら、誰が連れて行ってくれるのか」
「認知症になって、トイレの場所がわからなくなったら、どのように介護してもらえるのか」
「脚が弱り、転倒することが増えた時の見守りはどうなっているのか」など、毎日の生活に介護が欠かせなくなった時、どういうサービスを利用できるのかを確認しましょう。

以前、某シニア向け分譲マンションを見学した際、担当者の方に質問をしました。
私「認知症になって、お部屋がわからなくなったり、外出して戻れなくなったりといった症状が出てきた場合、どう対処されていますか?」
担当者「うーん、大変言いにくいのですが…分譲マンションの特性上、エントランスを施錠したり、職員が長時間付き添うことは難しいです。かと言って、『転居してください』とストレートには言えないので…ご家族に『ここでは安全を確保できない』とお伝えして、お引越ししていただいたことがあります」
正直にこのような実情をお話しいただいたことに感謝するとともに、「住み続けられる」という言葉だけではなく、具体的にどこまで対応してもらえるのかを確認することが大切だと、改めて感じました。
繰り返しになりますが、見学の際には、介護が必要になった時の体制をしっかりと確認してください。
ちなみに、このシニア向け分譲マンションのホームページにも「安心」という文字が見受けられます。
③月額費用(管理費、修繕積立金など)
一般的な分譲マンションの管理費より高めの設定をしています。
また、本格的な介護が必要になり老人ホームに転居して空き家になったとしても、月額費用はかかり続けます。
シニア向け分譲マンションのメリット
シニア向け分譲マンションには、老人ホームにはない魅力もたくさんあります。
「まだ介護は必要ないけれど、これからの暮らしをもっと快適にしたい」という方のニーズを捉えています。
① 元気なうちの暮らしを楽しめる
シニア向け分譲マンションには、日々の生活を楽しむための共用施設が充実しています。
また、サークル活動やイベント、旅行など、入居者同士が交流できる機会を設けているところもあります。
「家事の負担を減らして、趣味や旅行を楽しみたい」
「退職後も新しい友人をつくりたい」
「夫婦だけの生活から、もう少し世界を広げたい」
そんな方には、一般的なマンションにはない楽しみが見つかるかもしれません。
② 高齢者が暮らしやすい住環境が整っている
シニア向け分譲マンションは、高齢者が暮らしやすいように、段差を少なくしたり、手すりを設置したりするなど、バリアフリーに配慮されている物件が多くあります。
また、緊急通報システムや見守りサービスなどを備えている物件もあります。
「今は元気だけれど、一人暮らしなので、何かあったときが心配」
という方にとっては、一般的なマンションより安心感を得やすいでしょう。
③ 自分の「家」として暮らせる
シニア向け分譲マンションは、購入して所有する住まいです。そのため、老人ホームとは異なり、「施設に入る」というよりも、「自分の家で暮らす」という感覚を持ちやすいでしょう。
「施設ではなく、自分の家で暮らしたい」という方にとっては、魅力です。
④ 家事の負担を減らし、便利に暮らせる
物件によっては、食事の提供、清掃、買い物のサポート、コンシェルジュなど、日常生活を支えるサービスを利用できます。
特に館内にレストランがある場合は、毎日の食事を自分で用意する負担を減らすことができます。
「元気なうちの暮らしを楽しみながら、少しだけ安心もプラスしたい」という方に向いている住まいと言えるでしょう。
シニア向け分譲マンション向いていない人の特徴
①将来の介護が心配な人
介護サービスの充実度を重視するのであれば、やはり老人ホームが良いでしょう。年を取って、介護度が上がったときに、転居先を探すことがどれほど大変なことか、想像がつくと思います。
②将来売却して、老人ホームの費用にしようと考えている人
前述のとおり、市場が小さく歴史が浅いので、売却時の相場がわかりにくいです。想定より安値でしか売れないこともあるでしょう。そもそも買い手が見つかる保証もありません。
③子どもに残す資産にしたいと考えている人
シニア向け分譲マンションは、入居者の年齢制限を設けているところがあり(例:60歳以上)、相続したお子さんがその年齢に達するまで住めない場合があります。賃貸として貸せない場合は、誰も住んでいなくてもランニングコストは発生し続けます。
見学時に確認したい7つのチェックポイント
□介護が必要な程度の認知症になった場合も住み続けられるか
□ 要介護度が上がった場合、どこまで手厚く介護を受けられるか
□ 夜間や緊急時に、誰がどのように対応してくれるか
□ トイレ・入浴・食事など、日常生活の介助を受けられるか
□ 介護が重くなって退去した場合、その後の維持費はいくらかかるのか
□ 売却・相続・賃貸にどのような制限があるか
□ 購入費用だけでなく、将来も含めて毎月いくらかかるのか
どう選べばよいか
ここまで読んでいただくと、「シニア向け分譲マンションと老人ホーム、結局どちらが良いのか」と思われるかもしれません。
答えは、「どちらが優れているか」ではなく、「どちらが自分の暮らし方に合っているか」です。
- 資産として所有することを優先したいか、それとも介護の手厚さを優先したいか
- 元気なうちの暮らしを充実させたいか、将来の介護まで見据えて選びたいか
- どこまで費用をかけられるか
いずれの選択肢にも、メリットとデメリットの両方があります。パンフレットやウェブサイトの情報だけで決めず、必ず見学をして、実際の生活の様子、費用の詳細を確認することをお勧めします。
実は、この見学の段階で多くの方が
「いいことばかり説明されたけれど、本当なのか」と
不安な気持ちになります。
事業者の営業担当者は自社の強みを伝えるプロであり、多かれ少なかれ営業トークをします。
しかし、一般消費者が「介護度が上がった際のリアルな対応」や「将来のリスク」を見抜くのは困難です。
だからこそ必要なのが、事業者と利害関係のない「中立な専門家の視点」です。
当事務所では、老人ホーム選びサポートサービスを提供しております。
一生に一度の決断を、運任せにしたくない方のためのサービスです。
「自分の味方になってくれる専門家と一緒に選びたい」
そう思うお客様のお気持ちから生まれました。
お客様から料金をいただき、老人ホームとは提携せず、お客様の利益だけを考えたサポートを提供しています。
購入前に、熟考を
設備やサービスが充実しているシニア向け分譲マンションですが、価格や維持費が高額です。また、元気な人を想定しているため、本格的な介護サービスを求める人には向いていません。
シニア向け分譲マンションでも、老人ホームでも、それぞれのメリットだけでなくデメリットもきちんと把握したうえで、実際に見学をして、ご自身の希望や暮らし方に合っているかを確認することが何より大切です。
購入前にご自身の健康状態、希望するサービス、マンションの処分方法などをよく考えることをお勧めします。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます。